片道切符で飛び乗れ

ダークな世界観が魅力のロックバンド

Savage Choir「Winter Of Probator」

 

懲りずに1年放置してしまいました弊ブログ、気まぐれに一発ということで最近買ったこちら。ニューヨーク産スラッシャーの88年デモ音源9曲。結成は79年とだいぶ古株で、その後Death Maskと改名して86年にアルバムを一枚出した後再び屋号を戻して活動していた際に残していたデモ音源の再発ってことみたいです。これがVoivodがテクニカル・スピード・スラッシュ化したようなかなりインパクトある内容。デモ音源ということですが演奏バカウマだし音質も普通に悪くなく聴きやすいです。ここにハイトーンvoが乗ってくるとなればもうToxik、Realm、Targetあたりのファンは垂涎モノなんですが、そのボーカルがHadesやWatchtowerを思わせる中々の音痴っぷりでズッこけさせてくれます。かつて名サイトscsidnikufesinにてHadesにおけるアラン・テッシオのボーカルを「曲のテンションをつり上げるための化学燃料的存在」と評していたのが強く印象に残ってるんですが、このバンドも似たような接し方をしてあげる必要がありそうです。健常者からしたらそんな高度な聴き方を要求されても…って感じでしょうが、上に列挙したバンド一つでも掠る方(は大体全バンド耳を通してる気もしますが…)は必聴です。

ZILF「The Album」

UKのバンドによる20年作1st。年明けてから聴いて「あっベスト入れとけばよかった~」ってなったやつです。クロスオーヴァースラッシュのエンジンを換装されたVektorが、Every Time I DieとかMutoid Manあたりの、ちょっと土っぽい香りのする歌モノカオティックコアを演奏しているかのような、か~なり面白いことをやってのけてます。SikThと比較されてる方も見受けられてそれもなるほど確かにと思わされるところはある。それなりにシリアスではあるもののそれ以上にファニーな雰囲気が勝り、頗るキャッチーなリフとボーカルラインを猛烈な勢いで繰り出す様がとにかく聴いてて楽しくて、この辺りの感覚はやはりクロスオーヴァースラッシュ的だと感じます。何度か聴いてるうちにこれは現代版Macabreなのでは?と思えてきました。やっぱ私こういうの大好きですね~。これがUKから出てきたってのも面白いです。bandcampで投げ銭なのでたくさん聴かれるがよいと思います。

DIMLIM「MISC.」

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 ちょっと待ってて…と言ってから一週間経ってました…。というわけで2020年ベストアルバムです。前作1stにて一曲だけやけにチャカチャカした音色が印象的なマスロックに無理矢理ディルのうるさいパートをドッキングしたような怪曲「vanitas」(PVまで作っていたことからこの時点で相当手ごたえがあったんだと思う)を収録して一部界隈をザワつかせ、続くTesseracTかというようなシングル曲「離人」でそのマスさ・端正さに更に磨きが掛かり、っていう流れでの本作。最初聴いたときはちょっとデキすぎてて怖かったですね。デス声やヘヴィネスといったディル譲りの鎧(あくまでも鎧であって骨格は元々ディルとは別物であったと思う)を脱ぎ捨てて、テレキャスの硝子トーンをこれでもかと生かしたシャレオツ・バカテク・マスロックがいよいよ全編に渡り炸裂しながら、随所でエレクトロニクスが楽曲を優しく冷ややかにおめかしして近代ポップスにも共振していくような音響を獲得、そして常に楽曲のド真ん中に鎮座するのは歌謡曲ラインのコッテコテの歌メロという、V系領域では前人未踏と呼べる音楽性、その金字塔をいきなり作り上げてしまいました。

 マス~ポストロック~ニカ要素のあるV系というのは彼ら以前にも存在していて、幾つか例を挙げれば、現在はsukekiyoに在籍するメンバーがかつてやっていた9GOATS BLACK OUTやkannivalismカニバ繋がりで最近のBAROQUEなど、これらのバンドはポストロックやニカ要素を高次元でV系マナーに落とし込めていたし、ラッコはかなりマスい作風の大名盤「弱肉教職」(←これは特に今のDIMLIMが好きな人で未聴ならぜひ聴いてほしい)を17年にドロップしています。またV系外では凛として時雨がThe Fall of Troy的なうるさい寄りマスサウンドに90's Vの血をサラっと混ぜて(ルナフェス出演経験有)ロキノン邦ロックに昇華するなどしてました。それでも本作が圧倒的に”新しい”音楽たり得ているのには、大きく2つの要因があると思う。

 まず意外とメタルっぽさが残ってる点。「Funny world」「For the future」「Before it's too late」「out of the darkness」等の曲ではディストーションのかかった厚みのあるリフが聴けるし、ドラムは全体的にかなり近代メタル的な音作りをしていると思う(2バスも結構目立つ)。んで、こうしたメタル要素が軽やかでソリッドなマスの音像に極めて自然に溶け込んでいるのが凄い。思うに重低音を徹底してオミットすることで、ディストーションが前に出る場面であってもそこまでゴテゴテせずに調和がとれているのかなと。こうした配合比率は確かに今まで誰も手を付けてなかったところだと思います。上記した中ではラッコは割とメタル要素ありましたが、DIMLIMが持ってるメタル感はやっぱりDjent通過後のプログメタルのそれで、ラッコとは大きく雰囲気が異なるのも面白いです。

 そしてボーカルですよ。このボーカルを褒めちぎるためにここまで長々と文章を書いてきたまであります。デビュー当初”ホイッスルだけが異様に上手い京のモノマネ芸人”ってな佇まいだった人が、わずか3年程度でここまでの進化を遂げるとは誰が予想できましょうか。その京ですらここまでやらんでしょという超高音域が連発される歌メロを、声の太さも艶もバッチリ残したまま、V系以外の何者でもない節回しでゴッテリ歌い上げており、楽曲の魅力を何十倍にも増幅させています。TK(凛として時雨)があの高音を維持したまま真っ当に歌が上手くなったような趣もある。この超絶ハイトーンはおそらく京に憧れる過程で開発されてったものなんでしょうが、それがディルの呪縛から解き放たれることで真の居場所を見つけるとは、何ともドラマティックな話ではないですか。ハイトーンだけでなく、低域や裏声を交えたウィスパー寄りの歌唱もかつてとは比べ物にならない表現力でこなしており、間違いなく若手V系のシンガーの中でも最上位に位置するスキルを存分に見せつけております。このボーカルの進化があったからこそ、大胆な舵取りに踏み切れた部分もかなりあるんじゃないかと思います。

 本作が(少なくとも自分の観測範囲で)大いに話題になったのは、変化した音楽性というのがツイッターで音楽語りをしたがるようなめんどくさオタク層にウケが良いものだったからというのが大きいとは思うけど、一方でもっと広範囲にリーチするポテンシャルを有した作品であるとも思います。いっそ東京事変と並べて聴かれれば良い…というのは「気付かない者たちへ」の曲調に引っ張られ過ぎてますね。とりあえずここまで上げたバンド名、ミュージシャン名に一つでも引っかかった方は絶対必聴。

 

2020年のお気に入りアルバム

・DIMLIM「MISC.」

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私的2020年度ベストアルバムはこれでいきます。詳しくはこちら

 

・Arise in Stability「犀礼 / Dose Again」

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名前は昔から知ってるバンドではあったけど、失礼を承知で申し上げると、数年前にYoutubeに上がっていたPVの曲を見た時は「イモいな~」と思ってしまって、それっきりノーマークになってました。そんなPVの曲含む1stから9年の時を経てドロップされた本作、いくらなんでも化けすぎ。SIAM SHADE発ポストロック~激情ハードコア経由BTBAM行き、我が国が世界に誇るべき最強のプログレメタルの誕生です。

 

・Aseitas「False Peace」

Gorgutsインスパイア系デスメタルをベースにConvergeに端を発するメタリックなカオティックHCの粗暴さがプラスされたなんとも激烈な1枚でした。そこはかとなく薫る90年代的な暗さ・悪さが良い味出してます。今年(2020)で言えばPyrrhonの新譜が好きな人はこっちも聴いてほしい感じ。あと個人的には2020年ベストジャケはこれですね。カッコイイ。太っ腹なことにbandcampで投げ銭

 

・Black Curse「Endless Wound」

摩擦係数の高いディストーションサウンド、不明瞭なミックス、ノイジーな高域、ブヨブヨに膨らんだ中低域…間違いなくデスメタルの大切な魅力である瘴気・腐臭を生み出す源である一方である種の参入障壁にもなっているこれらの諸要素、無理矢理一つの単語で表すならロウネス(Rawness)でしょうか。それをここまで洗練された形で、口当たり良く提示した作品はかつてなかったんではなかろうか。イーヴォでプリミティヴでブルータルな、デスメタルの旨味全部盛りの極上品。

 

BUCK-TICK「ABRACADABRA」

VIZL-1787

結局この人たちの凄さはバランス感覚ってところに集約されるのかなと最近考えています。特定のパラメータが振り切れてるような在り方もそれはそれで魅力的ですが、肩に力を入れすぎず、明るい/暗い、激しい/優しいの中央をゆらゆらと揺蕩いながら、遊び心も、辛辣な毒も、シリアスなメッセージも自然に同居させる。あらゆるアプローチで最も聴き心地の良いポイントを打ち抜く稀有のバランス感覚。その感覚の研ぎ澄まされ具合で言えば、確かに本作を最高傑作とする声も頷けます。ここにきてさらに歌が上手くなってる気がする櫻井敦司をはじめ、世界で一番上手く歳を取ってるバンドだと思う。

 

・Cryptic Shift「Visitations From Enceladus」

Nocturnus、Timeghoulに端を発するSci-Fiデスメタルは、OSDM再興の中でも大きなムーブメントの一つと言えそうですが、その中でも本作の出来は白眉ではないかと思います。デスメタル版Vektorとでも言えそうな、捻くれてるんだけどキャッチーなリフワークが冴えてて、知性と勢いの両立がお見事。要所要所でGorgutsっぽくなるのも個人的には大アリですね。

 

Discharming man「POLE & AURORA」

POLE & AURORA | Discharming man | 十三月 / 13th recordds

年の瀬、年間ベストも出揃い始めたな〜って時期にそんなせっかちなベスト記事を嘲笑うかのように落とされた核弾頭。名前は知ってたけど聴くのは今作が初めてでした。これがオルタナ、エモ、ポスト○○、ハードコア、メタルetc…を北海道というキーワードの下一つの風景画としてどどーんと提示する圧巻の内容。もっと静が支配してる音楽を想像してたんだけど思いの外やかましく、それがそのままカッコ良さに直結しているのが素敵でした。

 

・GEZAN「狂(KLUE)」

これは正直入れるかどうか悩みました。間違いなく2020年随一の話題作ではあったけど、彼らの特異な立ち位置やアティチュードであったり、歌詞だったり、自分の語彙では中々説明しづらい音楽性(要するにメタル/ハードコア以外の要素)であったり、色々吟味しなくちゃならないことが多い気がしちゃうから。でも2020年一番口ずさんでた曲は多分このアルバムのリードトラックである「東京」であり(それかDIMLIMのWhat's Up?)、本アルバムがその「東京」を核として作られた、と言うならば、やっぱり選出すべきなのかなぁと。生き物みたいな、という形容は割とありがちですが、この作品のためにこそある言葉なんじゃないかなと思います。

 

・The Hirsch Effekt「Kollaps」

TDEP+Leprous…そんざ最強合成獣がいてもいいのか?いるんだなーこれがっていう最高の一品。重くしすぎない音作りが前述2バンドへの確かなリスペクトを感じますし、絶叫(グロウルよりもハイスクリームを多めに採用してるのがマス~カオティックコア感出てて良し)とクリーン声(まんまLeprousに聴こえることも多い)の使い分けも自分の琴線をグッサグサに刺してきてたまらんでした。これで3ピースは嘘でしょ。

 

・Imperial Triumphant「Alphaville」

テクニカル・プログレッシヴ・アヴァンギャルドデスメタルと言えばかつてはカナダの名産品というイメージでしたが、今やNYに取って代わられた感もあります。そんなNYデスメタルシーンの活況ぶりを分かりやすく示したのが本作ではないでしょうか。お馴染みのColin Marstonによるエンジニアリングに加え、本作ではTrey Spruance(Mr. Bungle)によるプロデュース。普段はむしろジャズプレーヤーとして名を上げているらしいメンバーによる演奏は確かにメタルだけ食っててもこうはならないだろうな~という自由奔放さを見せ、またTreyの手腕なのか、或いは多彩な客演が奏功したのか、この手の暗黒デスメタルにおいては異例と言えるほど各曲で異なる景色を描くことに成功しているように思えます。

 

・Kruelty「A Dying Truth」

2020年最もヘヴィで、最も踊れて、最もキャッチーなデスメタルだったと思います。とにかく聴いてて自然と体が動いてしまうし、基本音源よりライブを優先することはない僕みたいな人間でもこれはライブ観ないとダメなやつって直感でわかる(ファッキンコロナ)。上記Black Curseにも負けないくらいRAWの旨味をギュっと凝縮した(それでいて聴きにくくない)プロダクションが素晴らしくて、特にドラムの音作りが最高。

 

・lang「カイエ」

メンバー曰く3rdへの橋渡し的な立ち位置になるepとのこと。とても丁寧に紡がれた一枚であると思います。丁寧な激情ハードコア、言葉にするとなんだか矛盾しているように見えるけど、実際に耳に届く音は全てが必然なものとして響く。どこか地に足付いているというか、良い意味で泥臭く生活感を感じる音で、この点envyやkillieなどとはまた違った場所に向かおうとしているのかなと感じます。3rdアルバムも楽しみ。

 

・Liturgy「Origin of the Alimonies」

「もうポストブラックこれとKralliceと明日の叙景だけあれば他いらん!」などと雑な宣言をしそうになった大傑作H.A.Q.Qからわずか1年で届けられた新作。(チープなお涙頂戴とは無縁の)巨大感情大洪水だった前作から、本作はNYアヴァン系人脈から8人もの精鋭を従え、トレードマークのグリッチ処理もそこかしこで炸裂させながら、最早新種のプログレチェンバーロックかというけったいな内容に。やっぱり自分は前作の方が好きだけど、本作を最高傑作に挙げる人の気持ちもよく分かります。もうちょっと聴きこんだら評価逆転するかも。

 

lynch.ULTIMA

聴いた回数なら恐らくかなり上位に来ると思います。彼らに関しては数年前からマンネリ化を憂う声は観測しているけど、個人的には大きな変化がなく常に良作を届けてくれるバンド、聴くものに悩んだら取り敢えず再生しちゃう音楽、というのが一つでも手元にあると安心するのです。本作もまた、そんな彼らの安心のブランド力を更に盤石なものとする傑作でした。

 

・Melted Bodies「Enjoy Yourself」

2020年個人的新人賞は彼らに捧げたい。誰かしらいるようで不在な気がするポストSOAD~パットン関連の枠にすっぽり収まれそうな器です。いや実際は全然収まれてないはっちゃけ具合ですが(日本のAiliph Doepaなんかも頑張ってると思うけどもうひとはっちゃけ欲しい)。どうでもいけどそういえばこれ、ツイッターでどなたかがディルっぽいって言ってたのを見て飛びついたんでした(鬼葬前後のミクスチャー感との共振は分からんでもない)。

 

Napalm Death「Throes Of Joy In The Jaws Of Defeatism」

近年のナパームデス、本当に死ぬほど恰好良いんですよ。乱暴な例えで恐縮ですがConvergeを聴いてるときのような「ひょっとしてメタルとハードコアのカッコイイは全部ここにあるんじゃないか?」と思わせてくれるパワーと、飽くなき実験精神の極めて自然な共存。カオティックコアとか変なグラインドコアが好きな人は絶対に聴いてほしい(一曲目からDxAxっぽくて大興奮してしまった)。本作は個人的に最高傑作だと思っていた前作を超えてきた感すらある。正直こっちを一位にしようか最後まで悩みました。

 

・Nero Di Marte「Immoto」

以前2ndの方を本ブログで激賞させていただきましたが、そんな2ndから6年ぶりのリリースとなった3rd。前作から更に雄弁に歌うようになったダミ声ボーカルは静謐な場面ではOpethのようにも聴こえ、激しい場面では獰猛な獣の唸り声が如きで、微細な表現力に更に磨きがかかった印象。ポストメタル的な洒落たドゥーム感の使いこなしも相変わらず芸術的。Ulcerateの新作が気に入った方はこれも要チェキです。

 

THE NOVEMBERS「At The Beginning」

voの小林さんはかねてからL'Arc-en-CielやDIR EN GREYの影響を公言してましたが、本作では遂にyukihiro(L'Arc~en~Ciel/acid android)がプログラミングで参加。前作から色濃くなったニューウェーヴやインダストリアルの要素が更に地に足を付けた形で提示されています。曲順の流れが実に良い上に、最近のノベンバはとにかくアルバムをコンパクトな尺でまとめてくれるので、何度でも聴き通せてしまう一枚。あとエレクトロニクスを本格的に導入し出したタイミングがsukekiyoと被ってるのが個人的には面白くて、今こそ再び対バンを…!なんて考えてしまいます。

 

・Pyrrhon「Abscess Time」

ってことでAseitasの項で名前出したこのバンドの新譜も選出です。Imperial Triumphant(Baがかつて在籍)同様1stから一貫してColin Marstonが携わってるバンドでもあります(1stと2ndではマスタリング、3rd(前作)と本作では加えてレコーディングも担当)。こちらもGorgutsやConvergeの匂いはありつつ、さらにToday Is The Day的なサイコ感・酩酊感を強く打ち出しているのが印象的。近年のNYアヴァンメタル界隈は超絶技巧を生々しさの発露として用いるのが凄く上手いなと感じますが、彼らもその好例と言えるんじゃないでしょうか。

 

・Ulcerate「Stare Into Death And Be Still」

Gorgutsインスパイア系の中でも頭一つ抜けた知名度があるバンド。かれこれ6年くらい追いかけてますが、作を追うごとにアグレッションを削がずして美しく聴きやすく洗練されていってて、そうした取り組みは本作で一つの完成を見た感すらあります。あんまり言及されないけど自分はここのボーカル好き(低くて太くてよく伸びる実にディープなグロウル)で、本作では持ち前の威厳に表現力がプラスされた気がしてナイスでした。

 

赤い公園「THE PARK」

2020年はなんと言ってもデスメタルが大豊作でしたが、それら素晴らしいデスメタルの新譜の合間にチェイサー的に嗜んでいたのがこの1枚。まずポップスとして完璧に仕上がってる上で、要所要所でフリーキーなギターのフレーズとテクニカルなベースラインが不穏な引っ掛かりを生んでて凄く聴き心地が良かった。新しいシンガーも正直前任者より圧倒的に好き。

 

・明日の叙景「すべてか弱い願い」

国産ポストブラックメタルバンドの2ndEP。18年ベストに選出した大傑作1stに続く(スプリットは出してたけど)本作は陽性のメロディの比率が増え、Deafheavenを筆頭としたポストブラック勢により接近しつつも、やっぱり"本場"のバンドには逆立ちしても出せない和の情緒が味の決め手。間違いなく芯にはメタルがあるんだけど、それでいて何故こうも柔らかな表現力が板についてるんでしょうか。

 

清春「JAPANESE MENU/DISTORTION 10」

電車タバコの広告だったりオンラインサロンだったりにツッコミ入れたくなるのも人情ですが、この人、そうはいっても作る曲と歌声に関しては全く死んでないんですよ。死んでないどころか、更に熟成され研ぎ澄まされ、新たなキャリアハイと呼べそうな気配すらある、なんてのは言い過ぎでしょうか。近年はアコースティック編成での活動が目立ち、より己の声に焦点を絞っているような印象がありましたが、再びバンドサウンドを従えての本作は、必要十分なアグレッションにソロワークで煮詰めに煮詰めた渋味と色気が纏わりついて、思わず「やっぱりこういうのが聴きたかった!」と快哉を叫びたくなる力作。

 

五人一首「死人賛歌」

Tool、COCK ROACHの次はまさかのこの人たちまで新譜をドロップ。というわけで日本国唯一(?)のプログレッシヴ・デス、15年ぶりの3rdでございます。前作の時点で完成されていた、日本土着の怨念に犯されたCynicとでもいうべき音楽性は不変ながら、さらに研磨された形で舞い戻ってきてくれて感無量であります。付け焼刃の和風ロックとはまず食ってるものが違う、骨から滲み出る土着性に鳥肌立ちます(この点音楽性は異なるけど音鬼にも通じると思う)。SEに続く2曲目の冒頭のフレーズ一発で「五人一首だ!」ってなるピアノや、古風な歌い回しのクリーン声(真っ当な歌の上手さがある)とフィメールvoジャパコア的なシャウトを使い分けるシンガーなど、相変わらず一つ一つのパーツの記名性の高いことよ。

 

・ハイダンシークドロシー「ヒトリランド」

ヒトリランド by ハイダンシークドロシー - TuneCore Japan

やたら演奏が上手い人格ラヂオ~初期シドに米良美一が加入したらメルヘン趣味に目覚めた、みたいな激ヤババンドがこっそり(?)出してたデビュー作。ド歌謡メロディ+死ぬほど上手い歌の組み合わせの時点で私的には5億点出てるんですが、メルヘンかつインチキ歌謡ジャズな雰囲気で統一された曲群は一筋縄ではいかないですし(元犬神サーカス団のギタリストが多くの作曲を手掛けてるみたいです)そういった世界観に強烈な説得力を持たせてるのはやっぱりこのvo氏の力量・スタイルでしょう。この方が元々やってる実験台モルモットなるバンドも俄然気になってる次第です。

 

次点

・Afterbirth「Four Dimensional Flesh」

・BAROQUE「SIN DIVISION」

・Black Crown Initiate「Violent portraits of Doomed Escape」

・Beneath The Massacre「Fearmonger」

・Caligula's Horse「Rise Radiant」

・Conception「State of Deception」

Deftones「Ohms」

downy「第七作品集『無題』」

・END「Splinters From An Ever-Changing Face」

・ENDRECHERI「LOVE FADERS」

・Expander「Neuropunk Boostergang」

・Faceless Burial「Speciation」

・Feed Them Death「panopticism: Belong / Be Lost」

・Gargoyl「Gargoyl」

・Hail Spirit Noir「Eden In Reverse」

・Hell Freezes Over「Hellraiser」

・HOLLOWGRAM「Pale Blue Dot

Marilyn Manson「WE ARE CHAOS」

・Molested Divinity「Unearthing the Void」

・Oranssi Pazuzu「Mestarin kynsi」

・Pallbearer「Forgotten Days」

Paradise Lost「Obsidian」

・Sepulutura「Quadra

・Silverkord「Liquid Air

・Skeletal Remains「The Entombment Of Chaos」

・Sumac「May You Be Held」

・Sweven「The Eternal Resonance」

・Viscera「Obsidian」

・Voidceremony「Entropic Reflections Continuum: Dimensional Unravel」

・Wake「Devouring Ruin」

・Xibalba「Años en Infierno」

・ZILF「The Album」

岡村靖幸「操」

・君島大空「縫層」

・葉月「葬艶-FUNERAL-」

 

 というわけで、例年通り一位以外ABCあいうえお順で25枚選出です。2020年、まあこういう時世でしたので、例に漏れず自分も家に引きこもる時間が増えて、かつてないほど音楽を聴く時間を多く取ることができました。おかげで次点の数がえらいことになってますが、正直Spotifyで2,3回聴いただけみたいなのも多くて(本選の25枚はいずれも10回以上は通しで聴いていると思う)、そこは考えものですね…。この年はDIR EN GREYもsukekiyoもアルバムリリースがなくて、これまでの信者だからこれ一位!ムーヴができなかったこともあり(いや本気で一位だけど)、一位を選ぶのにも苦労しました。ギリギリまで迷ったのはNapalm DeathとArise in Stabilityかな。本選25枚を見てみると、国産アーティストがかなり多いですね。14/25が国産。今年はV系のリリース数自体が少なかったこともあり、自分のベストもV系減→外タレばっかになるかなーなんて思ってたら、非V系の国産バンドで刺さるものが多かったというオチでした。GEZANとかノベンバとか話題作も多かったですしね。V系オブ2020に関してはもうDIMLIMの優勝ってことで皆割と納得してもらえるんじゃないでしょうか。B-Tや清春は置いといて、(年明けてから!)ハイダンシークドロシーを聴くまでは少なくとも自分の中では本当にDIMLIM一強でした(…だけどさすがに再録ブルーフィルム聴かずにこういうこと言うのはダメだと思うので近いうちにちゃんとCD買います…)。あとはなんと言ってもデスメタルが大豊作の年だった!去年から引き続いてOSDM再興の流れは大きかったし、個人的にはGorgutsインスパイア系で素晴らしいリリースが相次いでいた年でした。僕がこの世で一番好きなデスメタルのアルバムはGorgutsの3rdなので、そこから影響受けつつ発展改変していくバンドが多数存在してるというのは喜ばしい限りです。期待してたけどそんなに…だったのはアルルカンとAnaal Nathrakhかな…。前者は決して悪くはないんだけどもうちょい胸倉掴んでくる何かが欲しかったし、後者は自分が苦手な類のクサメロが増量されてて正直勘弁してくれ~ってなってしまいました…。Dos MonosやPTHの新譜も一回聴いて前作の方が好きだな…ってなって放置してしまってるのでそのうち聴き直したい。新譜以外のとこだと何故か80年代のパワーメタル(一部NWOBHM)にハマってました。2020年に買ったCDの半分くらいは80'sメタルな気がする。特にSavage Graceの1st再発はメチャアツかったですね。前々から興味はあったんだけどその時点で出回ってたCDが所謂改悪リマスターというやつで、僕含めてオリジナルのマスタリングでの再発を渇望してた人は多かったんじゃないでしょうか。またそのへんのバンドと一緒になって聴いてたのがまさにヘヴィ・メタルど真ん中をブチ抜いてきてくれたHFOの新譜で、次点に入れた中でも最後まで本選に入れるか迷ったアルバムでした。

 

 2020年、訃報が多く聞かれた一年でもあったと思います。中でもSean Reinert、Sean Malone(Cynic)の両名、そして津野米咲赤い公園)の死は自分にとって衝撃でした。謹んで哀悼の意を表します。

 前者に関しては、自分の中ではWarrel Dane(Nevermore)の逝去以来の、10代の頃から愛聴していたアーティストの死、という経験になってしまいました。どうしようもないことではあるんだけど、今後こういうことは増えることはあっても減ることは決してない、っていうところは覚悟して生きていかなきゃなと思った次第です。

 赤い公園に関して、自分は昔から熱心にファンやってたとかでは決してなくて、猛烈リトミックが話題になっていたときに初めて名前を聞いて、以来その猛烈リトミックをたまにSpotifyで再生する、或いはYouTubeでPVをつまむ、という距離感でずっと接してきました。猛烈リトミックの後に出た作品は、自分の観測範囲では大きな話題になることはなくてスルーしていました。でも、2020年に出た新作が数名のツイッターの相互フォロワーの間で絶賛されてて、また、なんでもボーカルが代わってから初のフルアルバムらしい、というのを聞いて、久しぶりに赤い公園というバンドに興味が湧きました。そして聴いてみた新譜というのが素晴らしくて、こうして年間ベストに選出する程度には愛聴しています。以上のような接し方なので、正直に言えばバンドに対しての思い入れみたいなものは希薄だし、彼女の死が普段の生活がままならなくなるほど影を落とすことはなかったんですが、それでも、若くて素晴らしい才能をもった人間の死、というのは悔しい。THE PARKという傑作の次に来る作品を聴いてみたかったな、と強く思います。

 

 こんなところでしょうか。今年は去年よりはマシな一年になるといいですね。個人的なことを言うと4月からいよいよ社会人というやつにジョブチェンジをしなくてはならないようなので、まあほどほどにやっていきます。本ブログも隙を見て更新していけたらいいな~と思います。しくよろです。

 

 

2019年のお気に入りアルバム

sukekiyo「INFINITUM」

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2019年1位は勿論これです。これしかない。なぜなら信者だから…。で終わらせても良いんですが、歌の強さが際立ちつつエレクトロニクスの導入も目立った前作から、前者を抑え目にしつつ後者を増強したような作風へと変化し、無機質さ・冷ややかさを感じられる仕上がりに(このへん1stの空気が戻ってきた感触もある)。そこに血を通わせるバンドの演奏と京の歌唱は、“和”という言葉で安易に片づけきれない無国籍の情緒を相変わらず強烈に発散しています。京に限って言えば昔からパットンとの類似性は指摘されていましたが、比較的うるさめの曲においてここに来て一層パットン風味を感じられるようになってる気がするのは面白いですね。一方で「ただ、まだ、私。」(2019年ベストソングだと思う)に代表されるような歌を中心に据えたキラー曲もバッチリ装備。適度に実験やりつつ如何にも名曲って感じの名曲が混在している在り方がなんだかcali≠gariっぽいなーなんて思ったり。贔屓目抜きに今日本で一番面白いことをやってるバンドだと信じています。

 

Astronoid「Astronoid」

メロパワ・プログメタル・シューゲのちゃんぽんを最初からそこにあったかのような自然な口当たりで提示してみせてしまったセルフタイトル2ndでした。リリースが年明けだったためか意外と他所の年間ベストでは見かけてない気がしますが、いややっぱ凄いっすこれ。

 

black midi「Schlagenheim」

聴いてパッと出てくる単語こそポストパンクだのジャズだのプログレだの、敷居高めなキーワードが並ぶんですが、あくまでも野生の勘でそれらを選択しているというか、理性より衝動な音楽であると思うんですね。やんちゃで悪趣味なロック小僧のヒリついたエナジーがこれでもかと堪能できる1枚です。

 

Blood Incantation「Hidden History of the Human Race」

Hidden History of the Human Race

なんでかピッチフォークとかにウケちゃってハイプ街道まっしぐらなSci-Fiデスメタルの新鋭による2枚目。内容的には余所行きのおめかしなんぞせず、あくまでもデスメタルに忠実な(その上でデスメタルの過去と未来を繋ぐ)アルバムであるので、デスメタルがお好きな御仁ならば安心して楽しめると思われます。でももしこいつらがもっとウケて世間でTimeghoulとかDemilichの株が爆上がりしたりしたら愉快ですね。

 

COCK ROACH「MOTHER」

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これはかなり驚きをもって迎えられたリリースだったのではないでしょうか。個人的に今年に入ってやっと過去作を手に入れることが出来たため良いタイミングで出会えたように思います。変わらない持ち味をブラッシュアップしたような前半も極上ですが、変化・進化を提示した後半こそが肝かと。たまにsukekiyoみたいに聴こえる瞬間さえある。黒虫芸術界隈も掘らなきゃなーと思った次第です。

 

Dos Monos「Dos City」

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自分には一生縁のない音楽だと思っていたヒップホップと遂に和解(和解も何も別に喧嘩してたわけではありませんが)するときがきたか!?と感じるくらい衝撃だった(結局これ以外のヒップホップはあまり聴いてません…。でもKOHHのアルバムとか結構よかったです)、個人的にはある意味一番驚きの大きい作品でした。内容ですがこれはもうほとんどポストパンクです。black midiとの共演も必然でしょう。

 

Haunter「Sacramental Death Qualia」

ツイッターにて相互フォローの方がGorguts+Opethと形容されているのを見て、そんな贅沢があっていいものかと涎ダラダラで飛びついてみたらこれがグレイトな内容でした。昨今Gorguts~DsOの高性能フォロワーは探せば腐るほどいるんでしょうが、本作では確かにオペッぽさがある静かなパートがどれも凄く魅力的で、凡百のフォロワーバンドとは一線を画する美点になってると思います。これで元々スクリーモやってたって言われても俄かに信じがたいですが…。

 

Inter Arma「Sulphur English」

すっかり斜陽な佇まいのポストメタルというジャンルでまだまだ気を吐くUS産4th。これが何故かデスメタル…、それもGorgutsの系譜にあるような不穏なやつへの接近が見られ、個人的なツボを大いに刺激されてしまいました。Blood Incantationといい、ちょっと前までブラックメタルが担ってたであろう、うるさい音楽をアーティスティックに拡張しようとする作業が、デスメタルにバトンタッチしつつあるのが今なのかもしれないですね。

 

Leprous「Pitfalls」

Leprous - Pitfalls | The Progspace

前作にはまだまだ残ってた鋭角なバンドサウンドの主張はだいぶ影を潜め、今作ではエレクトロミュージックの要素をズガーっと導入。モダンプログ的な冷たさ・内省性を保持しつつ、最先端ポップスとも共振するメインストリーム性を有し、元々圧倒的だった音響空間表現はますますスケールアップの一途。最早アリーナが揺れる景色が見える域にまできてます。そして何より真っ先に聴き手の耳に届くのはお化け歌唱力による歌という。やっぱ歌が上手い人が好き。

 

Liturgy「H.A.Q.Q.」

H.A.Q.Q. | Liturgy

ポストブラックメタルマナーによる巨大感情大洪水を、管弦楽器・クワイア・シンセ・イカれたPCが如きグリッチ処理etc.がグッチャグチャに汚し、激情密教サイバーパンクとでもいうべき世界観で聴き手に殴りかかる壮絶な内容。初聴時の胸倉掴まれる度と、その後の耐聴度をメチャ高次元で両立してしまった大傑作だと言い切ってしまいたい。どう考えてもピッチフォークさんはBlood Incantationよりもこっちを推しとくべき。

 

LUNA SEA「CROSS」

大御所オブ大御所バンドが尽きぬクリエティビティをまたまた大爆発させた新たな名盤。初の外部プロデューサー起用、それによるポストロック/シューゲイザーへの接近という大胆な変化が、RYUICHIの歌唱力を150%出し切る方向に作用してるのが実に興味深いです。どうでもいいけど最近の隆の歌い方そこまでネチョネチョしてないと思う。

 

Madmans Esprit「Glorifying Suicide」

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まさかの韓国より現れた、V系メタルの未来を全部託しちゃいたい新鋭の最新EP。ヌメタ的な塊っぽいヘヴィリフの増量によりディル的なカッコ良さがより分かりやすく提示されたことや、どうにもこなれてなかった打ち込みドラムがだいぶマシになってきたことなどにより、個人的には今までで一番琴線にグサグサくる作品になっとりますがどうでしょうか。これの後に出たシングルも頗る良かった。

 

Mayhem「Daemon

大御所も大御所な御大の、個人的には最高傑作な気すらしてるのに何故かあんまり騒がれてない新作。アッティラさんの頑張りがかなりデカくて、トレードマークのボェボェだけじゃなく、真っ当にカッチョいい高低グロウルやら演説風アジりやらクリーン声やら、だいぶストレートなブラックメタルに回帰してきた楽曲をドス黒く彩る好パフォーマンスが最高でした。

 

MORRIE「光る曠野」

光る曠野 : MORRIE | HMV&BOOKS online - NWM11005

MORRIE的なものが渾然一体となったソロ史上における新局面を告げる傑作(原文ママ)。前作がアヴァンブラックメタル勢の隣人かというくらい、ともすればちょっと難解な印象の作品だったんですが、本作では幾分かバンドサウンドと歌メロが前に出てきて、CREATURE CREATUREにも接近するような手触りに。親切設計にはなりつつ、その“格”は変わらないどころかますます高みに到達している気がします。

 

No One Knows What The Dead Think「No One Knows What The Dead Think」

個人的グラインドコア神Discordance Axisの実質的復活。今年一番心躍ったリリースかもしれないです。アルバム再生即、あのDxAxの続きとも言える音像が耳に飛び込んできてガッツポーズ必死。Jon ChangはGlidlinkでもブリブリ絶好調だったので心配なかったにしても、松原さんとはまた趣が異なる、Rob Martonによるビターで冷たく美しいサイコ感が滲むリフはやはりどこまでも唯一無二。Kyosuke Nakano氏のグレイトなドラミング(魂のワンバスブラスト!)にも拍手。

 

THE NOVEMBERS「ANGELS」

この人らの音楽をV系っぽいって思ったことって実はそんなにないんですが(メンバーがV系好きを堂々と公言していることを置いてもそんなに露骨には要素を感じない)、間違いなく日本でしか生まれ得ない、かつ絶対的な質の高さが備わった音楽をやっていて、その意味では確かにラルクやB-T、ディルらV系レジェンドに比肩する偉業を既に達成しているバンドであると思います。なんだか小林さんのシャウトがどんどん京っぽくなってて最高。

 

Pensées Nocturnes「Grand Guignol Orchestra」

何人かの指摘の通り、ブラックメタル化したMr.Bungleってのが端的で分かりやすい形容だと思います。つまりは悪趣味でぶっ飛んだ内容なんですけど、とにっかくキャッチーで聴きやすいんですねこれ。これ系にありがちな最早メタルじゃないじゃん…ってこともなく、最後までやかましいのも好印象だし、ストロングゼロキメた男爵ってな具合のvoパフォーマンスも壮絶。

 

Takafumi Matsubara「Strange, Beautiful and Fast」

今年は個人的グラインドコア神が2人もアルバムを出して下さったので個人的にはグラインドコアの大当たり年です。我が国が誇るグラインド・ギターヒーローが豪華すぎる客演を見事に料理して、そのタイトルが“Strange, Beautiful and Fast”ですよ?もうひれ伏すしかありません。”強い””美しい””速い”他には何もいらないということがよく分かる。文句なしの大傑作。

 

Tomb Mold「Planetary Clairvoyance」

今だとどうにもBlood Incantaionの陰に隠れがちな感があれど、こっちはこっちで大変素晴らしいデスメタルですよ。必要十分なメロディへの気配りやスケールのデカさを表現として採用する知性とそれらを実現するテクニックはバッチリ現代水準なれど、根っこにどーんと居座ってるのはオールドスクールデスであり、あくまでも剛腕と血生臭さが先立つ仕上がり。うん、最高のデスメタルじゃないですか。

 

Wilderun「Veil of Imagination」

巷に溢れるOpethっぽいという謳い文句は基本的には信用しすぎないようにしてるんですが、本作はまずオーカーフェルトリスペクトな歌い回しのvoがクリーン・グロウル共にかなり魅力的でポイント高い上に、楽曲も在りし日のOpeth的リフを有効活用しつつ、ブラックメタルトレモロ&ブラストやらフォーク~エピックメタル由来のメロディやらシンフォアレンジやらを結集して、我が道を往く極彩色のプログデスを大成しておりグレイトでございました。

 

次点

ARTiCLEAR「黎明期の夢」

BAROQUE「PUER ET PUELLA」

Car Bomb「Mordial」

Cloud Rat「Pollinator」

DEZERT「black hole」

Howling Sycamore「Seven Pathways to Annihilation」

Hypno5e「A Distant (Dark) Source」

KOHH「UNTITLED」

Opeth「In Cauda Venenum」

She, in the haze「ALIVE」

Slipknot「We Are Not Your Kind」

Soen「Lotus」

Tool「Fear Inoculum」

Trollfest「Norwegian Fairytales」

Vltimas「Something Wicked Marches In」

 

というわけで、一年遅れでやってきた2019年ベスト20選でした。2018年ベストと同じく1位以外はABCあいうえお順で並べてます。どうして今更こんなものを書いてるかといえば、2019年が個人的未曾有の大豊作年だったからですね。このままなんとなく書かずにスルーするには余りにも惜しい名盤が多すぎました。いやー書いててとにかく楽しかった。2020年も素晴らしい作品はたくさんあったけども、ここに並べたアルバム群にはちょっち敵わないかな…というのが正直な気持ちです。18年ベストに合わせて20枚にしちゃったけど、これ以外にも凄いアルバムはたくさんあって、後でこっそり5か10枚足してもいい気がしています。Howling SycamoreとかBAROQUEなんかは最近聴き直して20枚の中に入れるか最後まで悩みました。あとToolは全然聴きこめてないので取り敢えず次点に入れました。

 

この調子で2020年ベストも書けないかな…書けたらいいな…。ってとこで2020年最後の更新となります。良いお年を。

 

V系お気に入り50枚(2020年11月14日現在)

最近Twitterにてこんな企画が流れてきました。

 うおぉぉ面白そう!既に数名のフォロワー氏が実際に50枚選出しているのを興味深く拝見させていただくなどしてるうちに、久しぶりに自己顕示欲がモリモリと湧いてくるのを感じ、気付いたらWordファイルに思いつくままにアルバムをリストアップしておりました。んで、たった今50枚の選出・順位付けが一応終わったので、5か月更新がないまま埃を被っているこのブログが発表の場として選ばれたということです。

 

それでは以下、1~50位まで一気にいきます。

 

  1. DIR EN GREYDUM SPIRO SPERO

 

 

  1. DIR EN GREYUROBOROS

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  1. sukekiyo「ADORATIO」

 

 

  1. sukekiyo「VITIUM」

 

 

  1. DIR EN GREY「The Insulated World」

 

 

  1. gibkiy gibkiy gibkiy「不条理種劇」

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  1. emmuree「lightless.」

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  1. あさき「天庭」

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  1. SCARE CROW「立春

 立春/SCARE CROW | 安眠妨害水族館

 

  1. MUNIMUNI「Magical Moonies」

 

 

  1. ムック「朽木の灯」

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12.  sukekiyo「INFINITUM」

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13. Madmans Esprit「glorifying suicide」

 

 

14. L'Arc-en-Ciel「ray」

 

 

15. sukekiyo「IMMORTALIS」

 

 

16. 音鬼「吼ゆる民」

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17. cali≠gari「13」

 

 

18. DIMLIM「MISC.」

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19. lynch.「AVANTGARDE」

 

20. La’cryma Christi「magic theatre」

 

 

21. DISH「蝶と独白と残黒」

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22. KYOKUTOU GIRL FRIEND「勝手にしやがれ

 

 

 

  1. 9GOATS BLACK OUT「TANATOS」

 

 

  1. BUCK-TICK「或いはアナーキー

 

  1. MUNIMUNI「THE DOGUU ALBUM」

 

 

  1. Laputa「絵~エマダラ~斑」

 絵~エマダラ~斑

 

  1. ムック「葬ラ謳」

 

 

  1. the GazettE「NINTH」

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  1. dieS「VICTIM」

 

  1. L'Arc-en-Ciel「HEART」

 HEART

 

  1. THE MORTAL「I AM MORTAL」

 

 

  1. La’cryma Christi「Sculpture of Time」

 

 

  1. Raphael「mind soap

 mindsoap.png

 

  1. LUNA SEA「STYLE」

 

 

  1. L'Arc-en-Ciel「TRUE」

 True

 

  1. gibkiy gibkiy gibkiy「In incontinence」

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  1. BUCK-TICK「No.0」

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38. MORRIE「光る曠野」

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39. LIPHLICH「蛇であれ 尾を喰らえ」

 

40. アルルカン「Utopia」

 

41. 摩天楼オペラ「Justice」

 

 

42. ラッコ「弱肉教職」

 

 43. CREATURE CREATURE「Light & Lust」

 

 

44. 人格ラヂオ「証拠」

 

45. Merry Go Round「幻覚α波」

 

 

46. DIR EN GREYARCHE

 

47. ギルガメッシュ「Girugamesh」

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48. kannivalismhelios

 

49. NoGoD「欠片」

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50. ROUAGE「Lab」

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[次点]

Acid Black Cherry「BLACK LIST」

・amber gris「pomander」

・BAROQUE「PUER ET PUELLA」

BUCK-TICK「アトム 未来派 No.9」

・DEATHGAZE「CREATURE」

・DEAD END「Metamorphosis」

・Develop One's Faculties「不格好な街と僕と君」

・D'espairsRay「MIRROR」

・the GazettE「DOGMA」

Gilles de Rais「殺意」

・HOLLOWGRAM「FLUID」

La’cryma ChristiLhasa

・L'Arc-en-Ciel「DUNE」

・L'Arc-en-Ciel「Tierra」

Plastic Treeトロイメライ

Versailles「NOBLE」

・蜉蝣「黒旗」

・可哀 想「白い花が、散る頃に」

・シド「憐哀」

・ナイトメア「the WORLD Ruler」


以上50枚(+次点)でした。

公式レギュレーションが、

・オールタイムベストで50枚(難しければ20枚くらいでも良い)

・”ヴィジュアル系”か否かの判断は選出者に委ねられる

っていう感じだったので、この枠に収まるように選んでみたつもりです。この手のアルバム選出企画では敢えて各バンド一枚ずつという縛りを設けてやってる方も多いんですが、自分はどうにもそれができないので、今回もバンドごとの枚数無制限でやってみた結果、トップ5に同じシンガーが歌っている作品が並び(全体では8枚)、ラルクは3枚選出、他2枚ランクインしたバンド多数、という大変アンバランスなリストになってしまいました。こうしてみると、自分はアルバム単位でよりもバンド単位で音楽を好きになりがちなのかもしれないな~と。このバンドはこの一枚だけはメッチャ好きなんだけど他は微妙…みたいなことはほとんど起こらなかったですね。50枚選ぶ、っていうところまでは意外と苦労なくできたんですが、そこから順位をつけるのがとにかく大変だった。思えば前に年間ベスト記事を書いたときも一位以外は順不同にしてたし、明確に順位付けしたリストって今まで作ってこなかったんですよね。ここはかなり時間使いました(というか記事放流してからもやっぱり順位弄りたくなってしまってちょこちょこ改訂しています…)。そしてこうした企画には必ずついて回る「これは〇〇なのか否か?」問題ですが、僕のV系の基準は一貫して、

・目の周りが黒くて

・ボーカルの歌い方がキモい

の2点なので、そこに当てはまるバンドは基本的に全て選出対象としています。例えば筋少とか人間椅子とか陰陽座とかマシンガンズとか、人によってはV系になり得そうだけど自分の中ではん?ってなる、というバンドも中にはちょこちょこあるので、これらは選外としています。あとベスト盤・編集盤は今回省いてます。これは具体的な理由があるわけじゃなく、選ぶときに無意識に省いてたみたいです。もしベスト盤・編集盤も対象とするなら、

cali≠gari「再教育 改訂版」

・KYOKUTOU GIRL FRIEND「シングルコレクション「SINGLES」」

・蜉蝣「心中歌」

この辺りは入ってきたんじゃないかなと思います。

せっかく50枚選んだんだし、もうちょっと遊べないかなと思って、取り敢えず年代ごとに集計を取ってみると、

90年代・・・8枚

00年代・・・10枚

10年代・・・31枚

20年代・・・1枚

こんな感じでした。圧倒的10年代の強さ。ここだけ見るとちゃんと現行のシーンにもアンテナ張れてるのかなと錯覚しますが、実際はキャリアの長いベテランによるリリースが多くを占めてるのでなんとも…。00年代はもうちょい多いんじゃないかと踏んでたんですが、なんとなく00年代にどーんと出てきたイメージがあるガゼットとかNoGoDとか摩天楼オペラとかでも今回選んでるのは10年代のアルバムだったりで、まあこういうバラツキになってるのかなと。次に1年単位で見てみると、

2010年(5枚)

2014年(5枚)

2017年(5枚)

2016年(4枚)

2018年(4枚)

このあたりが個人的当たり年みたいです。やっぱ10年代に集中しますね。ちなみに今回選んだ中で一番古いのはSCARE CROWの立春(1994)でした。そういえば黎明期のアルバム全然選ばなかったな…ということにここで気付かされる。DEAD ENDもXもデランジェもジキルも入ってないオールタイムベストというのはそれはそれでどうなんだという気もしますが、まあそのあたりは他の参加者がいくらでも入れるだろうしいいかな…。

割と勢いで選んだので、後から抜け漏れ出てくるかもですが取り急ぎこんな感じということで。もし「あれ君〇〇好きとか言ってなかったっけ?飽きちゃったの??」的なものがあれば、米欄とかツイッターとかでバンバン突っ込んで頂いてかまいません。ではまた。

 

Born Against「Patriotic Battle Hymns」

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US産ハードコアバンドの、91年1stと93年2ndのコンパチです。激情/カオティックコアの礎を築いた偉大な人たちですね。とはいえここには性急な変拍子も過剰なスピードも無く、ましてやメタルマナーのヘヴィネスなどもありませんが、じゃあ何がそんな発明だったのかっていうとやっぱりリフですよね。不協和音を大胆に取り入れた不穏で捻じれたギターフレーズの数々には、それまでのハードコアパンクにはあまり見られなかった気怠さやインテリジェンスが宿り、当時のシーンで結構なインパクトを放ってたんではないかと。どちらかと言うと骨の太くなったポストパンクと言った方がしっくりくる感じです。一方で憂いを帯びたエモーションの発露もあり、これも後々受け継がれる重要な要素ですね。これをベースにして、ある者はリズム、ある者はスピード、またある者はエモーション(或いはこれら全部)に磨きをかけていくことで、カオティック・ハードコア(日本国独自呼称)なるものが形作られていったわけですね。Ebullitionから出てた激情バンドとか大体元ネタこれじゃなかろうか。そんな歴史的価値云々抜きにしても今の耳に全然カッコイイんですけどね。寧ろ聴き手を振り回す要素がない分ダシの旨味がスッと沁みてくるのはオリジン故の強さ。90年代にしかない極上の退廃美が心地好いです。CDも多分1500円以内で拾えるはずだしサブスクにも上がってるので(激情/カオティック系は意外と音源に辿り着くハードルが低いのが偉い)臆せず色んな人にオススメできます。