片道切符で飛び乗れ

ダークな世界観が魅力のロックバンド

emmuree「lightless.」

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手刀界隈筆頭なんて呼んでみても言い過ぎではないであろう、間もなく結成20周年を迎えるらしいバンドの去年出た5枚目のアルバム。そんな手刀of手刀なバンドが本作発売に伴うインタビューではよりいっそうダークな世界観へ向き合う姿勢を語り、タイトルにはlightlessなどというワードを引っ張ってきているわけですから、否応にも期待が高まります。しかしこのバンド、やたら暗黒暗黒言われてはいるものの、軸としているのは所謂”白系”と言われるようなスタイルだというのが面白い。当然白系総本山初期ラルクにしたってダークで内向的な曲はたくさんあったわけなので、おかしいということもないのですが、結果としてこの暗黒白系なスタイルが、このバンド特有の”暗闇の中に差す一筋の淡い光”感を構築しています。って言ってもなんだか凄くベタベタな形容だしもうちょっと気の利いた言葉で説明したいところではあるんですが、とりあえず暗い曲調にところどころ明るさを挿してけばいいんでしょwみたいな付け焼刃では決してない、深みのある表現力があることは間違いありません。ここで注目したいのは存外にパワフルな演奏を披露しているということ。実際に聴いてみるまではもっと静を軸とした線の細い音像を想像していたんですが、いやいや結構な激しさ・うるささを備えていて驚きました。骨太という言葉すら使いたくなる。よって全編暗い曲調で固められてるんだけど暗さに押しつぶされて動けなくなるという感覚は全くなく、そうした力強さは前途の”暗闇の中に差す一筋の淡い光”感と合わさっていくことで、単に明るい暗いだけでは説明しづらいこのバンドだけが持つ彫りの深い陰翳として現れているように思います。と、ここまではアルバム全体を通した色合いの話として、その上で意外なほど曲調に幅を持たせているのにも驚かされます(9曲目の冒頭なんかブラックメタルみたいで意表突かれる)。去年で言うとkillieの編集盤を聴いたときなんかにも同じことを思いましたが、”色を統一しつつ割と様々なスタイルの曲を用意する”というのはアルバムとしての在り方の理想形の一つですね。あとやっぱり忘れちゃいけないのがボーカルの活躍。ソフトなタッチで暗い世界観に寄り添う、がなりや張り上げるような歌唱で激しさを演出・増長する、それらを曲ごと・場面ごとに使い分ける器用さも流石ですが(それこそ前途の曲調の幅に対応している)、MORRIEHydeを彷彿とさせる濃厚な歌い方で暴れ回るスタイルはそれ単体でバンドの顔となり得るインパクトがあり、アルバム全体をぶっとい芯で貫いて纏めんとするかのような気迫をビシビシと感じます。いや~しかしカッコイイ。暗黒云々以前にちゃんと”カッコイイ”という感想が出てくるのが何より嬉しいじゃないですか。聴いているあいだ「俺V系が好きでよかったな…」と思わせてくれるような、個人的にはそんなアルバムです。

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