片道切符で飛び乗れ

ダークな世界観が魅力のロックバンド

Nero Di Marte「Derivae」

f:id:DGO812:20190225200436p:plain

Gorgutsの3rdに影響を受けたと思しき(しばしばDeathspell Omegaからとも)不協和音マシマシのキモいテクニカルデスメタルというのはここ数年でそれなりの数のバンドが出てきていて、多分PortalとかUlcerateとかが有名なんじゃないでしょうか。去年だとImperial Triumphantとか良かったですね。このNero Di MarteもそんなGorgutsインスパイア系に数えられそうなことをやっとりますが(初めて北米ツアーやったときはGorgutsと一緒に回ったらしいです)、個人的には最高峰だと思います、いや本当に。今回紹介するのは14年発表2nd。デビュー作ではまだまあデスメタルだよねって範疇であったのが、本作ではだいぶはみ出して異形の暗黒メタルを大成してます。ざっくり言っちゃうとUlcerateをポストメタルに寄せた感じ。もしくは闇堕ちしたGojira。Ulcerateも鈍重ポストメタル的なスローテンポを挟むのが得意でしたけど、あっちが速いパートと対比するビートダウンみたいな使い方をしてたのに対して、この人たちは極端な速度の変化はほとんどなくて、いつの間にか速いしいつの間にか遅い。んでそもそも遅いパートもそこまで鈍重じゃなくて、常に何かが流れてる感じがあります。このゾル状グルーヴが生み出す酩酊感が全体を覆ってるのがまず不気味。そこに乗るボーカルは1stの時点で歌心のあるグロウルを披露してましたが、本作では咆哮の類もいくらか残しつつダミ声で完全に歌っている箇所が目立ちます。それも1と100をハッキリ使い分ける感じではなく、場面によって歌とも叫びともとれるような変化のさせ方をしてきます。おかげでこんな無愛想な音像にも関わらず常にメロディが流れているような不思議な聴き心地がある。MastodonとかGojiraとかに近い感じのスタイルですが、あちらよりもさらに気怠い感じ。このボーカルこそがこの作品の肝でして、得てして理を外れた未確認生命体みたいになりがちなこの手のバンド郡の中で、本作は前途のボーカルが表情(主に苦悶)というものを聴き手に意識させてくるために、かなり人型に近い生命体になっている気がします。全体としては静~動の幅は結構あるはずなのに、その変化がどこまでもシームレスに収まってしまっていることが本作の最大の特徴ではないでしょうか。気付いたら地獄にいる恐ろしさよ。最近は音沙汰ないバンドですけど、やっぱり頭一つ抜けた存在だと思います。どうでもいいけど僕はずっとこのバンドのことをオーストラリアかニュージーランドの出身だと思ってたんですけどイタリアなんですね。うーん意外と言うかなんというか。まだフランスの方がしっくりくる(DSOもゴジラもいるし)。イタリアデスというとSadistくらいしかパッと出てきませんが、影響受けてたりするんですかね。

youtu.be

open.spotify.com