片道切符で飛び乗れ

ダークな世界観が魅力のロックバンド

Gridlink「Longhena」

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僕はDiscordance Axisが好きです。そしてMortalizedが好きです。つまりはGridlinkが好きであるということであります。昔、グラインドコアというジャンルはTerrorizerの1stが世に出てからそれ以上の洗練はほとんどない、という見解を示す方を見て「実際その通りな部分はあるよな~いやまあ普通にそれ以降に出た好きなアルバムもたくさんあるけども」なんて考えたりなかったりということがあったんですが、DxAxとその周辺・関連バンドはそうしたグラインドコアの本流からは逸脱した進化を遂げたように思います。よく言われていることとしては”サイバー感”。グラインドコアと呼ぶには少々小綺麗で、どこか涼しく理知的、そしてドラマティック。そんな説明が厄介な音像を相手に説明してなんとなく納得させなきゃならないシチュエーションにおいて、このサイバーという形容はそれなりに有用なものであるようです。そこでこのGridlink、前途2バンドのメンバー含む日米混成集団による14年発表、3rdアルバム(そして現状のラストアルバム)に当たる本作は、ジャケットに印象を引っ張られている可能性も無きにしも非ずですが、確かにサイバーな世界観を漂わせております。Mortalized松原さんによるトレモロリフを主体としたギターワークは、Mortalizedよりも、そしてDxAxよりもメロディック。最早メロディを導入することに対して一切の戸惑いはなく、ここまで自信をもって提示されると頼もしさすら感じます。そのトレモロ活用も例えばブラッケンドだとか呼ばれてる人たちとは全く別物。Mortalized時代から相変わらずこの方の奏でるメロディというのはどこ由来なのか特定するのが難しいです。そしてバンドの首謀者、親日グラインダーJon Changはガテラルこそほとんど封印しているものの、あの何かに追われているダニフィルスとでも言うような、DxAx時代から変わらぬキレッキレのハイピッチスクリームを響かせています。このバンドは恐らく、DxAxやMortalizedよりも聴きやすく、より広くアピールしうるものなのだと思います。しかし聴いている間にくすぶる焦燥感、そして聴き終わったあとの一抹の寂しさはなんなのでしょうか。聴き進めるうちに小さな焦燥感が生まれ、それが徐々に大きくなっていく感覚がどうにもあって、そのうちに自分を置いてどこか違う世界へ行ってしまうのではないか、そんなことを考えてしまう自分がいます。まだ聴いていたい、行かないでほしい、自分もそちらの世界に連れて行ってほしい。その世界こそがサイバーワールド的なあれなんでしょうか。聴いていてこんな心持ちになることはDxAxでもMortalizedでも、それ以外の音楽でもなかった。ある意味得難い体験なのかもしれません。

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