片道切符で飛び乗れ

ダークな世界観が魅力のロックバンド

Born Against「Patriotic Battle Hymns」

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US産ハードコアバンドの、91年1stと93年2ndのコンパチです。激情/カオティックコアの礎を築いた偉大な人たちですね。とはいえここには性急な変拍子も過剰なスピードも無く、ましてやメタルマナーのヘヴィネスなどもありませんが、じゃあ何がそんな発明だったのかっていうとやっぱりリフですよね。不協和音を大胆に取り入れた不穏で捻じれたギターフレーズの数々には、それまでのハードコアパンクにはあまり見られなかった気怠さやインテリジェンスが宿り、当時のシーンで結構なインパクトを放ってたんではないかと。どちらかと言うと骨の太くなったポストパンクと言った方がしっくりくる感じです。一方で憂いを帯びたエモーションの発露もあり、これも後々受け継がれる重要な要素ですね。これをベースにして、ある者はリズム、ある者はスピード、またある者はエモーション(或いはこれら全部)に磨きをかけていくことで、カオティック・ハードコア(日本国独自呼称)なるものが形作られていったわけですね。Ebullitionから出てた激情バンドとか大体元ネタこれじゃなかろうか。そんな歴史的価値云々抜きにしても今の耳に全然カッコイイんですけどね。寧ろ聴き手を振り回す要素がない分ダシの旨味がスッと沁みてくるのはオリジン故の強さ。90年代にしかない極上の退廃美が心地好いです。CDも多分1500円以内で拾えるはずだしサブスクにも上がってるので(激情/カオティック系は意外と音源に辿り着くハードルが低いのが偉い)臆せず色んな人にオススメできます。

 

 

Toxik「Think This」

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US産テクニカルスラッシュ/スピードメタルの2nd。89年作。前途サブジャンルの中でも屈指の大名盤、どころかメタル史に燦然と輝くべき至宝だと思ってます。ヘヴィ・メタルは89年時点でここまで進んでいたという事実はもっと知られるべき。もうこれ以上はないだろうという最高峰のテクニックを、あくまでも猛烈なスピードと美メロ(notクサメロ)をぶつけるために惜しみなく用いているのが痛快すぎる1枚です。一番目立つのはギタリスト/コンポーザーのJosh Christian。メチャメチャクリーンな特徴的音色で、メチャメチャド派手で美しいメロディを、メチャメチャ高速で繰り出してくる。ギター全く弾けないので物凄く稚拙な感想ですがこんな感じです。僕は普段ギターソロをあまりちゃんと聴かない不届き者なんですが、この人、このバンドに関しては毎回ソロが待ち遠しくてたまらないです。全曲ドラフォかよってくらい長いピロピロが炸裂しますがクドさは皆無。ひたすら感動できます。シュラプネル辺りに発掘されて有名になってても全くおかしくない逸材なのに今に至るまでなぜ無名なのか理解に苦しむ…。加えてこのバンドは歌メロまで心に残るフレーズてんこ盛り。ジェフテイトの線を細くしてキーを上げたみたいなボーカルが普通に上手いっていうのもありましょうが、RealmやTargetといったハイトーンvo擁する同系統のバンド(これらも大好きですけど)と比較すると歌メロの質が段違いです。メタルを深堀りする気はないけどメロスピなら聴けるって人が歌メロだけ追って聴いても楽しめる…は言い過ぎかもしれませんが、Watchtowerとか初期Sieges Evenのボーカルに打ちのめされた人がこれ聴いたら泣いて喜ぶんじゃないでしょうか。そもそもこの超絶テク博覧会の中でこれほど起伏に富んだ歌メロのスペースが確保されてること自体異常なわけで。時代もジャンルも全く違いますけど、Nevermoreとか、Protest The Heroに匹敵する偉業が達成されていると思います。4曲目とかこれ系のジャンルじゃ滅多にお目にかかれないバラード曲ですよ(いい曲…)。あまり疾走してないみたいに言われることが多いアルバムで、確かにミドルテンポも相応に存在してて、またテクニカルであるが故のリズムのガチャガチャ感も強いのでそう感じやすいのかもですが、その分速いときはハチャメチャに速いです。コントラストでそう聴こえるってだけかもしれませんけどね。あっあと9曲目のツェッペリンのカバーは原曲知らないなりに悪くないと思ってます。





Gorement「The Ending Quest」

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スウェーデンデスメタルの94年作。バンド唯一のフルアルバム。スウェデスの中でも特に気に入ってる1枚です。この人らはとにかく暗くていいですね~。ゴシックデス~フューネラルドゥーム風の美しいメロディを、スウェデスらしいRAWな爆走と共に楽しめてしまうというありそうでない路線を大成してます。基本的にはメロディックであるスウェデスの中でも、こういうメロディセンスは例えばDismemberとかDesultoryとかとはまた別物。クサいのは嫌っていう渋い舌をお持ちの御仁もこれならペロリといけるんじゃないでしょうか。鍵盤とかアコギの入れ方も凄く上手くて、ここまでやってくれるのならいっそクリーン声も欲しくなってきますね。この後バンド名変えて女性vo入れてゴスドゥーム化したとの話も頷ける感じ。音質はこの時期のこの地域のデスメタルらしく荒々しいですが、それ以外は垢抜けてて前途の通りメロディも立ってるので、意外とこれ系聴いたことない人でも楽しめる気がします…って言うには少々陰惨すぎるか。自分が持ってるのはWithin the Shadow of Darknessというコンプリートディスコグラフィ盤で、2枚組で1枚目が本作、2枚目にデモ(これまた初期デス特有の旨味が凝縮された本作とは別ベクトルの極上品)とかいっぱいくっついてるっていう豪華仕様なんですが、見かけたら即買いです。そして今ならなんとサブスクで全部聴けます!どうしてもCDでというならば本作だけなら確か少し前に再発かかってたと思うので、今なら結構簡単に手に入るかも。

Chastain「The 7th Of Never」

はいUSパワーメタルです。87年産3rd。最近やってたパワメタ発掘事業の中でも特にガツンときたのがこれ。シュラプネル所属の超絶テクニカルギタリストが敢えて激渋ド硬派パワーメタルに徹し、その上で女体化したDIOとでも言うべきボーカルが縦横無尽に暴れ回る超カッコイイバンドです。US産らしいゴリゴリ感を湛えながら、欧州のバンドに通じる湿り気、暗さも備えてて、技術的にもトップレベル、つまりそれは最強のヘヴィ・メタルなのでは…?などと言ってしまってもあながち間違いではないであろう説得力。己の名前をバンド名に冠しちゃったリーダーでギタリストのDavid T Chastainさんがまず何と言っても有能で、えげつないピロピロも随所で見せつけながら(一曲目の冒頭から全開です)、ガッツィーなリフと美しいメロディをポコポコ量産してて、技術に溺れるではない優れた作曲センスを伺わせます。馬力も耳に残るフレーズも欲しい!っていう難題をバッチリクリアしてるのは間違いなくこの男の仕事。さらにこのバンドはLeather Leoneという逸材までいるのでもう無敵です。某ショップでヘヴィメタル界最強の女と言われていたのも納得のグレイトなパフォーマンスがこれでもかと。当時のパワーメタル界隈には女性voって実は結構いたみたいで、しかも何故かDIOフォロワーのパワフルな実力派も多かったらしく、このレベルの実力者が無名のままゴロゴロ転がってるとしたらちょっと怖いです…。このバンドが80年代に発表した4枚のアルバムは全部同路線で名盤ですが、特に本作はテンション高くていい感じです。

gibkiy gibkiy gibkiy「不条理種劇」

すっかりメタル墓荒らしと化してる弊ブログですが、何を隠そう己のルーツというのはヴィジュアル系ではなかったかと、ふとブログタイトルとURLを見て思い出しました。ということで今日はこれです。16年作1st。名古屋系、或いは手刀界隈の行き着く場所はここだったかと。テン年代に出てきた化粧してるバンドの中でも、1番ぶっ飛んでたのはこの人たちな気がしてなりません。全世界、オールジャンル見渡してもこれほど色が濃いバンドって滅多にお目にかかれないと思うし、それがV系という、自分が愛するジャンルの中から出てきたっていうのがなんだか誇らしかったりもします。言うまでもないですが一応説明すると、メンバーはkazuma(ex-Merry Go Round他)、aie(deadman、the god and death stars、ex-the studs他)、kazu(ex-蜉蝣、the god and death stars他)、sakura(ex-L'arc-en-Ciel、Rayflower他)という、いずれも豪傑と呼んで差し支えない四人。もともとkazumaさんとaieさんのみの編成のリズム隊レスバンドhighfashionparalyze名義で活動していたところに、リズム隊2人が合流し結成したという、極めて特異な経緯で出てきたバンドです。本作の多くはそのhighfashionparalyzeにて発表した曲のリメイクという体を取っています。オルタナ/グランジがルーツだというaieさんのギターのフレーズは、ここではそういう色もありつつアヴァンブラックメタル~激情/カオティックハードコアを連想させるようなヤバい香りを放つに至り、それも直接そのジャンルから拝借したのではなくて、自分たちが元々持ってたものの中から見つけてきて、或いは錬金して提示しているような佇まい(これはCREATURE CREATUREMORRIEソロにも似た印象があったりする)。天然でCynicの隣人みたいなとこに到達してたSCARE CROWといい、やっぱりこのジャンル、時たま異次元への扉開きますね。そこに乗るkazumaさんといえば、持ち前のあのねちっこさはそのまま、力強い声でダイナミックにメロディを紡ぎながら(一曲目のロングトーン圧巻)、喉のほとけを効かせたスクリームを随所で披露、その他パットン先生よろしく変態アドリブ奇声などなど、メリゴ時代にはあり得なかった歌唱スタイルを見せてて、MORRIEとAttila Csihar(Mayhem)が悪魔合体したかのような物凄いことになってます。この二人に負けず劣らず雄弁に歌うリズム隊も聴きごたえバッチリ。特にsakuraさんは実は1番はっちゃけているのはこの人なのではないかという叩きぶり。こうして出来上がってきたものはさぞ闇一色なのかと言えばそうとも言い切れなくて、時に適切な距離感で(ベタベタくっついてくるのではない)聴き手に優しく寄り添ってくれるような居心地の良さが確かにあるんですね。特に4曲目、5曲目、7曲目などは比較的聴きやすいのではないかなと思います。何よりこの人たちには暗い音楽、アンダーグラウンドな音楽だけに許されたカリスマ性というものが強烈に備わっているのが良い。V系という音楽の一番美味しいところをしっかり持ってるバンドだと思います。

 

Macabre「Gloom」

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US産グラインドコア/デスメタルの89年作。1stにあたるみたいです。こりゃ凄い!全パートがかなりのテクニックを誇り、グラインドコアかくあるべしという勢いとテクデスかと見紛ほどの整合感を両立した目が回るような演奏に、やたら必死な高低デス声にクリーン声まで絡んでくる多彩なVoワークが乗っかって、FantomasかMr.Bungleかというファニー&ポップな雰囲気(歌詞はシリアルキラーネタみたいです)を醸成。89年でこれはかなり早いんじゃないでしょうか。ギターが高域でメロディ性のないピロピロをばら撒いてくところなんかまんまカオティックコアに聴こえる。それでいて出オチ感はなく、ちゃんと音楽をやってるところが好感度大ですね。どのリフも超キャッチーて恰好良くて凄いっす。同年発表の金字塔Terrorizerの1stの隣に置いてもなんら劣ることのない垢ぬけ度合。それどころか最近のカオティックコアとか実験的なグラインドコアとか聴き漁ってる層にも余裕でオススメできる内容です。ハイスピード×ファニー×バカテクということで、Spazztic BlurrとかLudichristあたりのテクいクロスオーバー勢を思い出したりもします。意外とまだまだ流通も良いみたいなので全員買いです。キャッチー&エキセントリックな衝撃の19曲24分。

tetola93「tetola93」

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足利産激情ハードコアの編集盤。これ出した後にバンドは解散済。好きな国産激情は?と聞かれたら大体答えとして出すバンドが3つあります。killie、kulara、そしてこのtetola93。この3つの中で一番やかましくてかつメロくて、キャッチーというか、即効性があるのがこのバンドだと思います。整ったメタリックな音作りの対極に位置するRAWできったないプロダクションで、全パートが何をそこまでという猛烈なスピードとテンションの演奏をブチかます(ベースがやたらゴキゴキと唸っててカッコイイです)。曲の長さは基本1~3分台。間違いなく根っこにはハードコアがあるのだけど、そこに情緒不安定すぎる絶叫と歌メロ、激情と歌謡曲の暗く湿ったとこだけ抽出して煮詰めたみたいなメロディセンス、随所に差し込まれる病的なSEやサンプリングなどなどが乗っかって、陰惨で病みきった、デプレッシヴ・エモヴァイオレンスとでも言いたくなる壮絶極まりない内容に仕上がってしまっています。激情通り越して最早怨念の域。これこそ日本人にしかできないハードコアの形じゃなかろうか(そう思うと屍(もちろんバンドですよ)と共振するところがあるのかもしれない)。強烈なセカイというものを持っているので、某アニメの主題歌のカバーという暴挙に出た6曲目も完全に自分たちの曲にしてます(前後の違和感がなさすぎて笑ってしまう)。なんか物凄くとっつきにくいと思われそうですが、リズム面での屈折はそこまで見られず、全編メロディックであるので、最初に言った通り凄くキャッチーなんですね。この点でもミドルテンポでリズムこねくり回しがちな激情バンド群とはちょっと違う。編集盤だというのに全体の流れがやたら秀逸なのも凄い。特になぜかこれだけ歌中心の明るいエモ曲の9曲目、最後の最後で地獄の長尺ローテンポを叩きつける13曲目などの配置は最高で、下手なアルバムよりアルバムしてます。しかし解散決めた上でこれ出して散ったというのは余りにも恰好良すぎますね~。緑色のジャケも最高にイカす。