片道切符で飛び乗れ

ダークな世界観が魅力のロックバンド

wombscape「ゆめうつつまぼろし」

アートコアを標榜する国産バンドの2018年作。15年にepも出してるようですがそっちはまだ未聴。アルバムタイトルと曲名までは日本語で固めておきながら歌詞は英語(歌詞カードには和訳のみが載っている)という妙な捻くれ方に一聴してまず面喰らいます。一応激情~カオティック的な質感はあるんですが(あとはポストロックか)、あざとい焦燥感アピールやお涙頂戴にはなびかず、基本スロー~ミドルテンポの反復でモノトーンの世界を描いていく様は中々に不気味。暗いは暗いんですが聴き手を完全に突き放す感じではなく、適度な距離感を持って寄り添う暗さとでも言うんでしょうか、やっぱり得体が知れない…。前途の英語詞もある種のミスリードで無国籍感を演出しているともとれ、そう簡単に正体を掴ませてくれる親切さはないですね。こういう音楽性でピンボの人(リーダーでメインコンポーザーだとか)がガッツリ歌い込むというのも珍しい。絶叫もそこそこに渋めのミドルボイスで丁寧にメロディを紡いでいくのが印象的ですが、ボーカルオリエンテッドというには曲に溶け込み過ぎているし、かと言ってボーカルも楽器の一部~みたいなありがちな表現も当てはまらない、独特な立ち位置にある歌い手です。こんな感じで、似ているバンドを羅列しづらい個性を有する一方で、聴きこんでいるうちに段々これは9GOATS BLACK OUTと他人の空似なのでは?とも思ってしまいました。あとは某ディストロでも言われていたけど後期Kularaともなんとなく同質の空気を共有しているような気もします。それってつまり最高のやつではないですか。上記2バンドのファンの方は騙されたと思って是非一度。