片道切符で飛び乗れ

ダークな世界観が魅力のロックバンド

TERROR SQUAD「Chaosdragon riging」

気付けば1年以上放置してました弊ブログ。自粛期間にでも何か書いたろかと思ったり思わなかったりしているうちに緊急事態宣言も解除され、社会が再び動き出しつつあります。というわけでこちら。TOKYO METAL ANARCHYさんの2nd。2006年の作品。久しぶりに聴いてみたらやっぱり物凄い内容で圧倒されました。圧倒された勢いで書き殴ります。やたらガチャガチャしたリズムや展開はほとんどカオティックコアの域。冴えたメロディによる静パートなんかも結構な頻度で登場し、時にはジャズもどきみたいなとこまで到達、それなんてプログレ○○?ってな雰囲気もあります。これらが基本1~4分台の曲に圧縮されスラッシュメタルのエンジンでマシンガンの如く出力されます。しかし全体の印象は頭でっかち感よりも前へ前へっていう野蛮な勢いが先立つという。なんなんでしょうかこの恐ろしいまでの目つきの鋭さは。確実に言えるのはボーカル氏の貢献がデカい。アツさ、キレ、ハードコア的なヤサグレ感…といったパロメータが軒並み高水準をマークしており、身も蓋もない言い方をすればただただ恰好良い声していらっしゃいます。今作からドバっと導入された日本語歌詞も情感演出に一役買ってて(1曲目の「流れにお前をブチ込め」とか名フレーズですね)、これでちょいメロディ意識したシャウトしてるときなんかはまんまジャパコアに聴こえる。そうなってくると随所に出てくるメロディの数々もジャパコア由来なものに聴こえてきます。ああ最高。これを唯一無二と呼ばずしてなんと呼びましょうか。なんかあまり売ってるとこ見かけないですが物販とかにはまだあったりするんですかね。あ~一度ライブ観てみたいな~。

Gridlink「Longhena」

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僕はDiscordance Axisが好きです。そしてMortalizedが好きです。つまりはGridlinkが好きであるということであります。昔、グラインドコアというジャンルはTerrorizerの1stが世に出てからそれ以上の洗練はほとんどない、という見解を示す方を見て「実際その通りな部分はあるよな~いやまあ普通にそれ以降に出た好きなアルバムもたくさんあるけども」なんて考えたりなかったりということがあったんですが、DxAxとその周辺・関連バンドはそうしたグラインドコアの本流からは逸脱した進化を遂げたように思います。よく言われていることとしては”サイバー感”。グラインドコアと呼ぶには少々小綺麗で、どこか涼しく理知的、そしてドラマティック。そんな説明が厄介な音像を相手に説明してなんとなく納得させなきゃならないシチュエーションにおいて、このサイバーという形容はそれなりに有用なものであるようです。そこでこのGridlink、前途2バンドのメンバー含む日米混成集団による14年発表、3rdアルバム(そして現状のラストアルバム)に当たる本作は、ジャケットに印象を引っ張られている可能性も無きにしも非ずですが、確かにサイバーな世界観を漂わせております。Mortalized松原さんによるトレモロリフを主体としたギターワークは、Mortalizedよりも、そしてDxAxよりもメロディック。最早メロディを導入することに対して一切の戸惑いはなく、ここまで自信をもって提示されると頼もしさすら感じます。そのトレモロ活用も例えばブラッケンドだとか呼ばれてる人たちとは全く別物。Mortalized時代から相変わらずこの方の奏でるメロディというのはどこ由来なのか特定するのが難しいです。そしてバンドの首謀者、親日グラインダーJon Changはガテラルこそほとんど封印しているものの、あの何かに追われているダニフィルスとでも言うような、DxAx時代から変わらぬキレッキレのハイピッチスクリームを響かせています。このバンドは恐らく、DxAxやMortalizedよりも聴きやすく、より広くアピールしうるものなのだと思います。しかし聴いている間にくすぶる焦燥感、そして聴き終わったあとの一抹の寂しさはなんなのでしょうか。聴き進めるうちに小さな焦燥感が生まれ、それが徐々に大きくなっていく感覚がどうにもあって、そのうちに自分を置いてどこか違う世界へ行ってしまうのではないか、そんなことを考えてしまう自分がいます。まだ聴いていたい、行かないでほしい、自分もそちらの世界に連れて行ってほしい。その世界こそがサイバーワールド的なあれなんでしょうか。聴いていてこんな心持ちになることはDxAxでもMortalizedでも、それ以外の音楽でもなかった。ある意味得難い体験なのかもしれません。

handshakeinc.bandcamp.com

Nero Di Marte「Derivae」

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Gorgutsの3rdに影響を受けたと思しき(しばしばDeathspell Omegaからとも)不協和音マシマシのキモいテクニカルデスメタルというのはここ数年でそれなりの数のバンドが出てきていて、多分PortalとかUlcerateとかが有名なんじゃないでしょうか。去年だとImperial Triumphantとか良かったですね。このNero Di MarteもそんなGorgutsインスパイア系に数えられそうなことをやっとりますが(初めて北米ツアーやったときはGorgutsと一緒に回ったらしいです)、個人的には最高峰だと思います、いや本当に。今回紹介するのは14年発表2nd。デビュー作ではまだまあデスメタルだよねって範疇であったのが、本作ではだいぶはみ出して異形の暗黒メタルを大成してます。ざっくり言っちゃうとUlcerateをポストメタルに寄せた感じ。もしくは闇堕ちしたGojira。Ulcerateも鈍重ポストメタル的なスローテンポを挟むのが得意でしたけど、あっちが速いパートと対比するビートダウンみたいな使い方をしてたのに対して、この人たちは極端な速度の変化はほとんどなくて、いつの間にか速いしいつの間にか遅い。んでそもそも遅いパートもそこまで鈍重じゃなくて、常に何かが流れてる感じがあります。このゾル状グルーヴが生み出す酩酊感が全体を覆ってるのがまず不気味。そこに乗るボーカルは1stの時点で歌心のあるグロウルを披露してましたが、本作では咆哮の類もいくらか残しつつダミ声で完全に歌っている箇所が目立ちます。それも1と100をハッキリ使い分ける感じではなく、場面によって歌とも叫びともとれるような変化のさせ方をしてきます。おかげでこんな無愛想な音像にも関わらず常にメロディが流れているような不思議な聴き心地がある。MastodonとかGojiraとかに近い感じのスタイルですが、あちらよりもさらに気怠い感じ。このボーカルこそがこの作品の肝でして、得てして理を外れた未確認生命体みたいになりがちなこの手のバンド郡の中で、本作は前途のボーカルが表情(主に苦悶)というものを聴き手に意識させてくるために、かなり人型に近い生命体になっている気がします。全体としては静~動の幅は結構あるはずなのに、その変化がどこまでもシームレスに収まってしまっていることが本作の最大の特徴ではないでしょうか。気付いたら地獄にいる恐ろしさよ。最近は音沙汰ないバンドですけど、やっぱり頭一つ抜けた存在だと思います。どうでもいいけど僕はずっとこのバンドのことをオーストラリアかニュージーランドの出身だと思ってたんですけどイタリアなんですね。うーん意外と言うかなんというか。まだフランスの方がしっくりくる(DSOもゴジラもいるし)。イタリアデスというとSadistくらいしかパッと出てきませんが、影響受けてたりするんですかね。

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emmuree「lightless.」

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手刀界隈筆頭なんて呼んでみても言い過ぎではないであろう、間もなく結成20周年を迎えるらしいバンドの去年出た5枚目のアルバム。そんな手刀of手刀なバンドが本作発売に伴うインタビューではよりいっそうダークな世界観へ向き合う姿勢を語り、タイトルにはlightlessなどというワードを引っ張ってきているわけですから、否応にも期待が高まります。しかしこのバンド、やたら暗黒暗黒言われてはいるものの、軸としているのは所謂”白系”と言われるようなスタイルだというのが面白い。当然白系総本山初期ラルクにしたってダークで内向的な曲はたくさんあったわけなので、おかしいということもないのですが、結果としてこの暗黒白系なスタイルが、このバンド特有の”暗闇の中に差す一筋の淡い光”感を構築しています。って言ってもなんだか凄くベタベタな形容だしもうちょっと気の利いた言葉で説明したいところではあるんですが、とりあえず暗い曲調にところどころ明るさを挿してけばいいんでしょwみたいな付け焼刃では決してない、深みのある表現力があることは間違いありません。ここで注目したいのは存外にパワフルな演奏を披露しているということ。実際に聴いてみるまではもっと静を軸とした線の細い音像を想像していたんですが、いやいや結構な激しさ・うるささを備えていて驚きました。骨太という言葉すら使いたくなる。よって全編暗い曲調で固められてるんだけど暗さに押しつぶされて動けなくなるという感覚は全くなく、そうした力強さは前途の”暗闇の中に差す一筋の淡い光”感と合わさっていくことで、単に明るい暗いだけでは説明しづらいこのバンドだけが持つ彫りの深い陰翳として現れているように思います。と、ここまではアルバム全体を通した色合いの話として、その上で意外なほど曲調に幅を持たせているのにも驚かされます(9曲目の冒頭なんかブラックメタルみたいで意表突かれる)。去年で言うとkillieの編集盤を聴いたときなんかにも同じことを思いましたが、”色を統一しつつ割と様々なスタイルの曲を用意する”というのはアルバムとしての在り方の理想形の一つですね。あとやっぱり忘れちゃいけないのがボーカルの活躍。ソフトなタッチで暗い世界観に寄り添う、がなりや張り上げるような歌唱で激しさを演出・増長する、それらを曲ごと・場面ごとに使い分ける器用さも流石ですが(それこそ前途の曲調の幅に対応している)、MORRIEHydeを彷彿とさせる濃厚な歌い方で暴れ回るスタイルはそれ単体でバンドの顔となり得るインパクトがあり、アルバム全体をぶっとい芯で貫いて纏めんとするかのような気迫をビシビシと感じます。いや~しかしカッコイイ。暗黒云々以前にちゃんと”カッコイイ”という感想が出てくるのが何より嬉しいじゃないですか。聴いているあいだ「俺V系が好きでよかったな…」と思わせてくれるような、個人的にはそんなアルバムです。

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WRECKingCReW「夜と太陽のDNA」

Hawaiian6に真っ正面から対抗しうる唯一のバンドではないでしょうか。誰もが一度は妄想したであろう「もしハワイアンが日本語で歌い出したら…」という禁忌をこのバンドはすがすがしいほどにやってのけてくれています。それも男女ツインボーカルで…。やりすぎです。拙い英語詞もメロコアの醍醐味だとする向きもあるでしょうが、それでもこの暴虐の限りを尽くす歌謡パゥワァを前にすると圧倒されます。ついでに言うなら向こうがアルバムの要所要所で陽性寄りの曲をアクセント(或いは必殺のキラー曲)として配置してたりするのに対し、このアルバムは全編暗い曲で固めてるのも凄い。もうベットベトです。メロコアというジャンルに属することを考慮してもやたら一曲一曲が短い気がするのも(中盤に至っては一分前後の曲が2つ続いたりする)一切攻め手を緩めず畳みかけられてる感に繋がっていて、聴いててここまで「完敗です…」ってなれるアルバムもそんなにない気がします。四の五の言わずに取り敢えず哀愁でブン殴る!っていう方針があまりにも徹底されすぎていて、実は後半バラードが集中してたりラピュタの曲カバーしてたり…っていう変化球が変化球にも聴こえてこない壮絶さ。その「君をのせて」が入ってるっていうのと1stより速い曲がたくさん入ってるって理由で2ndの本作を紹介しましたが、まあ正直どっちを紹介してもよかった気はします。共にブックオフの280~500円棚によく刺さってるので見つけたら即保護してあげて下さい。めんどいならマケプレでもいいです。

 

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Crypt of Kerberos「World of Myths」

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ボチボチ更新再開していきたいな…、ってことで本年一発目はこれです。初期スウェデスの異端バンドが1993年に発表した唯一のフルアルバム。これ書くにあたって久々にCD引っ張り出して聴いたら記憶の3割増くらいギターが弾きまくっていて思わず笑ってしまいました。リフもテクスラッシュ的な忙しさをコントロールしたりスローパートはビシっと邪悪にキメてくれたりで十分魅力的ですが、この美旋律ピロピロリードギターがあっちこっちで暴れ回るのがとにかくまず耳を惹きます。それがミスマッチな飛び道具としてではく意外と違和感なくデスメタルのフォーマットに落とし込まれてるのが凄い。シンセなんかも結構被せてきて、テクい初期デス+シンセの組み合わせだと真っ先にNocturnusが浮かびますが、あちらのSFチックな雰囲気ともまたちょっと違う仕上がりで、ほんのりエピック系統の匂いが。こんな音楽性なのにボーカルは妙に低くてゴツい渋ガテラルっていう対比も好ましいし、たまに出すクリーン声もボソボソ虚無系ばかりじゃなくて(そういうのも大好きですけど)一曲目なんて案外熱っぽい歌唱を披露してて素敵です。やっぱりこの時期のヘンテコデスメタルはクリーン入れてナンボですよ。でもここまでやりたい放題やっておいてクドさが全くないっていうのがこのアルバムの何より得難い個性かもしれません。所謂メロデスみたいなのとも全然別物。かと言って如何にもなスウェデスをお求めの方にも薦め難いでしょうか。あくまでお上品に仕上がってます。マケプレかユニオンラインでリハ音源いっぱい付いた再発盤が1000円しないくらいで買えるはずなので全員買って下さい。これ以前のデモはまた違ったベクトルでとんでもないことになってるみたいなので(PoSのDaniel Gildenlow参加ってマジですか)そっちもそのうち入手したいですね。

2018年のお気に入りアルバム

DIR EN GREY「The Insulated World」

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そりゃまあ一番はこれですよね、信者なので。…で終わらせても全然良いんですが、散々原点回帰だなんだと言われてた前作以上に原点回帰的(鬼葬~マロボン辺り)なアプローチを見せつつ、URBRS~DSSを通過したことで纏った密教ムードもまだまだ無駄にはせんぞと言わんばかりに随所で顔を出してくれるのがURBRS~DSS厨泣かせでもあり、パッと見は贅肉を削いでガツンと来る生理的快感を追及した風に見えて、実は最初期以外の全ての時期のファンを納得させちゃえるような、前作とは全く違う形での集大成。正直そこまで高くなかった期待値を軽々とぶっちぎっていってくれた攻めまくりの快作でございました。贔屓目抜きに色んな人におすすめ。毎度お馴染みクソ高限定版のディスク2に付いてる再録も今回は全部良かったですよね。

 

Birds in Row「We Already Lost the World」

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イケイケシャレオツハードコア製造工場Deathwish産カオティック。ポストメタルとも共振していくスケールデカめのサウンドスケープを、あくまでも3ピースという軽装備に拘って、ハードコアにしか成し得ない繊細さでもって描き出してくれてます。物理的な質量ではなくピンと張り詰めた空気の重さで圧殺してくるタイプの音。

 

BUCK-TICK「No.0」

This is ゴーイングマイウェイ。安心安定の前人未踏。何度聴いても上手く良さを伝えられる言葉が紡げないのでもう紹介文放棄しますが、かといって聴き手を突き放すようなことは決してしないのがいつだってこのバンドの凄いところ。特に本作は入門盤としても機能しそうなのが怖い。

 

Dark Millennium「Where Oceans Collide」

知る人ぞ知る的ジャーマンヘンテコデスメタルバンドの復活後2作目。後追いで聴いた本活動時の2枚のアルバムはそれはそれは奇々怪々としたものでした。復活作に当たる前作は未聴ですが、本作を聴く限りはだいぶ分かりやすいメロディに気を配って随分と親切設計になってて、それでも聴き終わった後には「つまり、何?」となってるような不思議ちゃんっぷりが素敵でした。

 

Develop One's Faculties「不恰好な街と僕と君 」

ラッコと並び、現代に蘇った新型オサレ系。どちらのバンドも新人らしい勢いを見せつつ、実は中堅~ベテランに片足突っ込んでるくらいのキャリアになるメンバーによる安定感とハズしのテクの両立という共通点があるように思いますが、こちらはデジタルな音だったりボカロ以降の"言葉のリフ"なんかも適宜用いて、より煌びやかにV系と非V系の境界でハジけてます。

 

emmuree「lightless.」

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各所からの「お前このバンド絶対好きじゃんなんで聴いてないの?」という圧力にとうとう屈し、取り敢えず目下最新作である本作を買ってみたところ、案の定ひたすらツボを突かれ続けるやつございました。なんていうか、これ聴いてるときは俺V系が好きで良かった…と思えている気がします。こっちに書きました。

 

the GazettE「NINTH」

それまでのEDM方面への実験も落ち着いて、再びヘヴィにダークにヴォイヴォイしてみた結果「今更そこかよ」だの「りんch.のパクり」だの散々な言われようだった前作DOGMAは「いやでも何だかんだこういうの大好きじゃん?」って感じで個人的には大いに楽しませてもらったんですが、目下最新作となる本作ではそのDOGMAの馬力をいくらか引き継ぎつつ、キャリア全期に渡る総括的アプローチを取り、その結果が誰よりもヴィジュヴィジュしい作品として表れているというのは、シーンにおけるこのバンドの在り方を示しているのではないでしょうか。

 

Gouge Away「Burnt Sugar」

ポストハードコアを始めとした90'sアングラ寄りオルタナティヴな人たちが持っていたソリッドな翳りを、現代でも有効な一撃として昇華した音像が、たまたま個人的にそのへんのバンドに興味が湧いて掘るようになった時期の嗜好と丁度マッチしてリピートしてました。これもDeathwishですね~。

 

heidi.「ケセラセラ

自分はこれがハイジ初体験でしたが、大変失礼な話ながらそれまで抱いていた"なんか昔からいるパッとしないバンド”という印象をガバッと覆された素晴らしい内容。今回ここに並べたアルバムの中でも特に”いつ聴いても楽しめる”ものだと思います。自分は聴いてて何故かD'espairsRayを思い出す場面が多かったですが、歌メロと歌い方がチョイ似?

 

HIMO「I LOVE YOU」

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異形の北新宿・ハートフル・ハードコア。こっちに書きました。

 

Horrendous「Idol」

Tribulationなんかと共にここ数年ハイプされまくってる新世代デスメトルの一角で、自分は本作で初めて触れたので過去どうだったかは知りませんが、これがAtheist〜在りし日のOpethを彷彿とさせるリフワークとスマートなメロディの入れ方で往年のプログデス好きを一発KOするイカしたブツで素晴らしかったです。

 

Imperial Triumphant「Vile Luxury」

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2018年最もイケてたデスメタル。Gorgutsに端を発する不協和音マシマシ暗黒デスメタルというリングの上で、ガチのジャズプレイヤー達が向こうのルールを持ち込んで全然違う格闘技やってるみたいな、って僕はジャズ全く分からないんですが、とにかく強烈でした。

 

Klan Aileen「Milk」

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ライブを観るのは人並みに好きだけど、やっぱり自分は基本的には家でスタジオ音源をまったり聴いてる方がより好きっぽいということに薄々気付き始めた2018年でしたが、これに関しては一聴して生で体験してみたいと強く思いました。平成最後のポストパンク・アサルト。

 

lynch.「Xlll」

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上記ガゼ新譜とはまたちょっと違ったベクトルで、V系のド真ん中を悠然と歩いていくようなアルバム。「THIRTEENという曲を1曲目に持ってくる事が出来る今のlynch.がとても誇らしい」という葉月氏の言葉の通り、「これが今の俺らだから」という自信が全編滾ってます。そしてソングライティングにおいてますます存在感を増すY介氏の頼もしさよ。AVANTGARDEがフェイバリットである身としましては、より激しいlynch.が恋しくないと言えばウソになりますが、でもやはりこれは名盤なのでしょう。

 

Madmans Esprit「Conscientization of Unconsciousness」

まさかの韓国より現れたディルアングレー崇拝V系ブラックメタル。初聴のインパクトなら今年一、二を争うかもしれない。日本での初ライブが手刀だったり(観たかった…)、ツイッターのバンド垢でemmureeのメンバーをフォローしてたりでもはや実質手刀界隈。権利関係が怪しい脈のカバーも最高でした。

 

Manes「Slow Motion Death Sequence」

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Atrox人脈によるノルウェイの元ブラックメタラーアヴァンギャルドとは言いつつ基本的には歌メロを真ん中に据えた分かりやすいスタイルで心地よく浸れますが、それでも苛烈なバンドサウンドが要所で絶妙な汚しを加えていくのが己の出自を主張しているかのよう。

 

MUNIMUNI「月光男の日記」

上記emmureeと並んで手刀と言えば!なバンドの1年ぶりミニ。ゴシックロックがルーツとは言うけれど他にこんなことやってるゴシック一つもないです。全6曲と云う"私生活において最も聴きやすいタイム感"(原文ママ)も手伝ってリピートしまくってますが、そろそろフルアルバムを聴いてみたい欲も…。

 

Rites of Thy Degringolade「The Blade Philosophical」

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噛めば噛むほど味の出るS級のアングラ・デス・ブラックメタルこっちに書きました。

 

Riverside「Wasteland」

Opethが好きな人はだいたいこのバンドのことも好きって言ってる気がする。ここ最近顕著だったオールドロック回帰も一先ず落ち着いたのか、本作では再びオペイズム溢れる幽玄フォーキーなプログメタルに立ち戻ってくれて、そりゃ個人的にはこっちの方が嬉しいよねってことでまんまとリピートしてます。

 

Sacral Rage「Beyond Celestials Echoes」

こういうのももう全然掘ってなかったんですが、年の瀬になかなか面白いやつを見つけました。Toxikを彷彿とさせるテクニカルなスピード/スラッシュメタルやUSパワーメタル的な捻りがありつつ、古き良きスタイルのハイトーンvoが程良いクサレ感を醸し出しながらグイグイ引っ張っていく気持ち良いアルバムです。

 

SWARRRM「こわれはじめる」

発売直後の盛り上がりっぷりから考えると今各所の年間ベスト読んでても意外と出てこないなぁというのが正直な感想で、実際賛否割れて当然な内容だとは思うんですが、自分はなんだかんだガッツリハマりました。個人的にはLUNA SEAの去年のアルバムと同じような「これはこれでええな!」って感覚で接しています。

 

Tribulation「Down Below」

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 2018年、デスメタル系では多分最初に「おっ」ってなった作品。ゴシカルなメタルではあるけど所謂ゴシックメタルとはまたちょっと違うよね〜みたいな独特な立ち位置にある音を出してて、スウェーデンのバンドだけど英国的な薫り高さを強く感じるのが面白いです。そこまで複雑だとか小難しいだとかいう感じもなくて、V系好きな人とかに普通に薦めてしまいたい。

 

Voices「Frightened」

Akercocke復活でこっちは止まるかなーなんて思ってたけど普通に出してきた3枚目。やたら激しかった前作と比べると今作ではゴス~ポストパンク由来の静パートを大増量してて、そうなるとオーカーフェルト風のクリーン声を持つvo氏が実は良いパフォーマンスしてたんだな~って気付いたりで、現状まーったく話題になってないものの、個人的には正直去年のAkercockeのアルバムより楽しめちゃいました。

 

wombscape「ゆめうつつまぼろし

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今一番9GOATS BLACK OUTが好きな人に聴かせたいハードコア。こっちに書きました。

 

明日の叙景「わたしと私だったもの」

我が道を往く国産ポストブラックメタル。日本語詞を前面に押し出しているからだけでは説明できない和の情緒がそこかしこに滲み出た、間違いなく日本人がやる意味があるエクストリームミュージック。いつか上記Madmans Espritと対バンしてほしいな~なんて思ったり。

 

番外編

City of Caterpiller「Complete Discography」

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killie「犯罪者が犯した罪の再審始まる」

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宗教上の理由で編集盤はベストに選出できないので苦肉の策でこっちに。どちらも所謂激情ハードコアに区分されそうな音を出していて、また2018年のベストライブアクトでもありました。

 

次点

ANYO「In My Book」

Ataraxy「Where All Hope Fades」

AZRAEL「Moonchild」

Burial Invocation「Abiogenesis」

cali≠gari「14」

DEZERT「TODAY」

DIMLIM「CHEDOARA」

Howling Sycamore「Howling Sycamore」

illya「Microcosmos」

Mili「Millennium Mother」

Panegyrist「Hierurgy」

Parasite「残響」

People In The Box「Kodomo Rengou」

Portal「Ion」

Tesseract「Sonder」

Vein「Errorzone」

weepray「楽園」

赤いくらげ「赤裸々」

アルルカン「BLESS」

陰陽座「覇道明王

清春「夜、カルメンの詩集」

ヘクトウ「雨の朝、新宿に死す」

 

 というわけで、最初のディル以外は順位は付けずABCあいうえお順で25+α枚並べてみました。これを書き始めたのが12月の終わりくらいですが、書きながらアルルカンやHOLLOWGRAMのミニをSpotifyから流してメッチャ良いじゃん…ってなったり、そのSpotifyのリリースリーダーでPhlobotomizedとMourning Againが新譜出してるのを知って爆笑したり、今さっきDan WeissとOksennusのCDポチったりで、ガバガバの累乗みたいなリストですが、まあせっかくこんなブログ作ったんだし、一度はこういうのやってみたいよね〜という誘惑にまんまと敗北した次第であります。

 去年は例年以上にデスメタルとハードコアを優先して聴くようになったり、Gouge Awayのとこにも書きましたが下半期には90'sオルタナティヴ周辺やポストパンクに興味が移ったりしてて、逆にV系をあまり積極的に聴かなくなったような気がしていたんですが、こうして並べてみると結局V系ばっかですね。V系以外のところでは「俺自分が思ってた以上にOpeth好きだったんだな…」って思わされるような出会いが多かったような気がします。今Riversideなんかがハチャメチャにツボってることを考えると、所謂モダンプログレとやらもボチボチ掘っていった方がいいかな~とか考えたりなかったり…。あと11月くらいから何故か後期ミッシェル~ROSSOにドハマリしまして、連日リピートが止まりません。ROSSOなんかは各メンバーの知名度の割にあんまり話してる人がいない気がするので、いっそここでなんか書いてみてもいいかもしれないですね。

 

 まあこんな感じの2018年でした。本年もよろしくお願いします。